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シャインはしばし戸惑った。ヴィズルの突然の心変わりに。
おそらく今置かれたシャインの境遇を、過去の自分と重ね合わせたのだと察するが。
ヴィズルは焦れったそうに舌打ちした。
いら立ちをつのらせて左手に持った長剣を軽く振る。
「あの男の息子だからといって、お前に恨みがあるわけじゃない! だが海軍に留まれば、いずれお前は俺の敵になる。だから、断れば殺す」
あちこちで火が爆ぜる乾いた音が響く。
メインマスト全体が巨大な火柱となって天を焦がしている。
その光景をちらりと見て、シャインはゆっくり首を横に振った。
真実を知ってしまった以上、それを見過ごす事などできなかった。
「君こそエルシーアから立ち去ってくれ、ヴィズル。君が手を下さなくても、間違った事をしたのなら、あの人は自ら犯した罪の報いを必ず受ける」
「何だと?」
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