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「誰かいないか! 返事をしろ!」
やるせない思いにとらわれた、イストリアの太い声が虚しく響いている。
応える声がないか、海面で助けを求めている者がいないか、耳をすませ目をこらす。
シャインも、ファスガード号の徐々に小さくなっていく炎の光の中、生存者を見落とさないようにじっと海面を見つめていた。だが船の残骸と力尽きた人々の他に何も見つけられなかった。
大半はエルガード号に乗っていた者達であろう、青色の上着をまとった水兵達。
もしくは――。
水兵になりすましていた、ヴィズルの仲間。
シャインは唇を噛みしめ、引き込まれそうに深くて真っ暗な海を見つめた。
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