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シャインは舵柄から伝わる舵の感覚を意識しながら、水平線近くで瞬く星が右手に見えるように船の向きを修正した。
ボートには簡易コンパスが積み込まれていた。それを掌に載せ、北西に向かっているかどうか確認する。
水兵達の体力も考えるとボートを漕ぐのは三十分が限度だろう。
シャインは星の位置がずれないように意識を集中しつつ、海を漂流することを思った。
気掛かりなのはジャーヴィスの事だった。
大型船に出会わずこのままずっと漂流すれば、いずれ全員死ぬ。
ジャーヴィスを含め体力が落ちた負傷者達の方が、ずっと早くそうなることは明白だ。
シャインは舵柄を握る右手に、知らず知らずのうちに力を込めていた。
助かるべき命をできるだけ失わせないために選んだ選択が、結局は無意味だったと思いたくなかった。
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