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イストリアが前を見るようあごを動かしてみせたので、シャインは身を起こしながら目をこすった。
水兵達は船縁へ手をついて体を支えながら、口々に感嘆の声をあげている。
その視線の先にある澄んだ蒼空と緑がかった海面の境界に、薄いクリ-ム色の大きな帆が浮かび上がっていた。
後方からの風を受けて速度を増しているのか、船首に舞い上がるしぶきが、濃紺の船体にきらきらと光を降り注いでいる。
「まさか」
シャインは目の前に現れたその存在がとても信じがたく思えた。
自分はまだ眠っていて夢を見ているのではないだろうか。
一回強く目をつぶって再び開く。
それは確かに存在していた。そして、シャインの知っている海軍の船だった。
「ウインガード号……」
彼女はノーブルブルーの旗艦だった、アストリッド号の妹艦にあたるが、砲門数の関係で一つランク下、2等クラスの軍艦だ。
「ウインガード号は修理のため、アスラトルの工廠に入っていたはずなのに……」
シャインは徐々に近付いてくる船を手びさししながら眺めた。
太陽の光に反射する波頭が眩しかった。
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