3-28 失った命と失わせた命

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「でもあれは間違いなくウインガード号だ。きっと万一を考えてツヴァイス司令が、修理を急かして寄越してくれたんでしょう! くそっ……うれしいったらありゃしない!」  イストリアはボートの舵を右手でとりながら、やおら勢いよく左手を上げると親し気にシャインの背中を叩いた。 「一時はどうなるかパニック起こしそうだったんですけどね! あんたの運の強さに助けられましたよ、まったく!」  はしゃぐイストリアに、シャインは小さく口元に笑みを浮かべて目を伏せた。  運でも何でもよかった。それが皆を助けてくれるのなら。  髪をそよがせる風が急に心地よく感じた。 「おーい! こっちだ!」 「くそっ! よかったなー、おい」  三十人がひしめくボートの中で、水兵達は上着を脱ぎ、頭の上でぐるぐると回しはじめた。
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