3-29 選択

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「誰か、いないか……」  俺は探している。  波の音さえも聞こえないこの真っ黒な海で。  何か、を。  誰か、を。 「誰、か」  俺はさらに船縁から身を乗り出し、カンテラを海面へと近付ける。  滑らかな動きを繰り返す波が、ほんの僅かだけ明るさを増した。 「……」  望んでいた声が聞こえたような気がする。  助けを求めている、幾つものそれが。  この暗い海に沈んだ――いや、俺が沈めるように命じた、エルガード号の生存者たちが、このボートの下の海から俺を呼んでいる。
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