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何故?
なぜ?
底などあるのだろうか。
一辺の光すら射さない闇の中で、俺はただ、落ちていく。
身を切るような水の冷たさに手足の感覚はすでに無く、息も続かないというのに、意識だけは異様にはっきりとしている。
俺の体から手を離さない、青ざめた顔の男が耳元で囁いた。
「お前は選んだのさ」
――選ぶ?
「そうだ。お前は、生きる者と死ぬ者を選んだのだ」
――それは……。
「お前はファスガード号の者達を生かすために、俺達、エルガード号を見捨てた」
「見捨てたんだ。俺達を」
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