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「あ、ああ……、そうする」
クラウスは軽くジャーヴィスに一礼して待合室を出て行った。
しばらくして、給金を手にした数人の水兵達が、一応にジャーヴィスに挨拶をして出ていった。
「……ジャーヴィス中尉」
名前を呼ばれので、ジャーヴィスは一番右端の窓口へ行った。
眼鏡をかけた四十代の女性職員が、営業スマイルをふりまきながら、彼に給与明細書の入った封筒と、赤い紐でとじられた封書の束を手渡した。
「二ヶ月分の明細と、あなた宛の手紙です」
「どうも」
ジャーヴィスは整然とそれを受け取った。
手紙の束は十通あまり。みな同じ水色の封筒だ。
かすかに、清楚なエルシャンローズの花の香りがした。
ジャーヴィスはそれらを右手に持った鞄の中へ放り込み、待合室の扉を開けた。
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