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シャインはゆっくりと立ち上がった。頭上から小さくウインガード号の船鐘の音が聞こえてくる。夜の深い闇に溶けるように消えていったその音は一回だけ。
シャインはため息をついた。
まだ深夜0時。今夜も長い時間を過ごす事になりそうだ。
せめてウインガード号の深夜当直になっていれば、船の航行や風向きに気を配っているうちに、何時の間にか夜が明ける。だが、救助されて今日の日没まで甲板にいたので、ウインガード号艦長のウェルツ大佐が、流石にシャインを当直から外したのだ。
ウェルツの配慮は当然のことだろう。
『怪我をしたお前の部下より酷い顔をしている』
ウェルツにそう言われたら、ここは大人しく引き下がるしかない。
人間は何日まで眠らずにいられるのだろうか。
いっそ、何もかも不意に途切れてしまえば――良いのに。
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