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ウインガード号はノーブルブルーの旗艦だったアストリッド号の妹艦にあたる。アストリッド号の半年後に就航したので、彼女もまた船齢二十年を迎える旧い船だ。
この二十年。どれだけ多くの軍人が彼女に乗り込んで海賊と戦い、そして、血を流していったのだろう。船の外側は綺麗に紺碧色に塗装されているが、内側は砲弾で穴が開いた箇所を塞いだ、色の違う木材がそこここに打ち付けられている。
シャインはそれを一瞥して、多くの人間が触れたせいで黒光りする滑らかな階段の手すりに手をかけた。
「……?」
ふと足を止め、振り返る。
誰かに見られている気配を感じたが、気のせいだろうか。
後方は士官部屋と砲列甲板を区切っている、帆布のカーテンが揺れているだけだ。
シャインは目をこすった。
三日間不休で水平線を見つめ続けていたせいか、目蓋が腫れぼったくなっていて、天井にぶら下がった薄暗い角灯の明かりでは、窓のない砲列甲板の通路がよく見えない。
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