3-29 選択

17/17
前へ
/659ページ
次へ
 イストリアは辛辣な口調でそう言うと、充血した目でシャインを睨みつけていた。  彼もまた、生きる者と死ぬべき運命の者を選んだのだ。  ウェルツ艦長への報告を終えて部屋を出た時、イストリアがひっそりと口を開いた。 『グラヴェール艦長。あなたが下甲板に降りていった時、正直もうだめだと思いました。けれど、あなたは船が沈む寸前で甲板に姿を現した。それを見た私は心の底から喜びましたよ。何故だかわかります?』 『……』  喜んだといいながら、シャインを見下ろすイストリアの微笑は固く強ばり、唇が斜めに引きつっている。言葉とは真逆の冷たさだった。 『よくぞ生きて下さった。あなたが出した多くの犠牲の責任をとって下さるために!』
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加