3-30 残されし者達

2/18
前へ
/659ページ
次へ
 シャインは無意識のうちに暗い階段を昇り、ウインガード号の上甲板に出ていた。  後方から吹く風はウインガード号の大きな四角い帆を膨らませ、小気味よく船を走らせている。夜空はどこまでも黒く、遠く、そして二つの金と銀の月が小さく並んで昇っていた。  シャインはどこに意識を向けるわけでもなく、人気のない後部甲板の左舷側へと近付いた。双子の月は出ているのに、そこから見える海は波濤のきらめき一つなく、まるで夢で見た闇の海のようだ。  シャインは船縁から身を乗り出して黒い海面を見下ろした。  ひたすら目をこらした。  整える事を忘れた髪が肩から滑り落ち視界を覆った。  シャインはそれを右手で押さえ付け、再び食い入るように海を覗き込んだ。  何も見えない。  見えるはずがない。  こんなに暗くては――。  何か、明かりを持ってこないと……。 『それ以上身を乗り出すと危ないわよ』  背後で女の声がした。
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加