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「……」
一体自分は何をしていたのか。
暗い海を覗き込んで、何を見ようとしていたのか。
打ちつけた後頭部に広がる鈍い痛みと、言い様のない虚しさだけがシャインを満たす。シャインは甲板に寝転がったまま、右手を目蓋に載せた。
『何だ。最初から死ぬ勇気もないんじゃない。だったら声なんかかけるんじゃなかったわ』
シャインは目を閉じたまま息を吐いた。
さっきから誰かが自分に話しかけてくる。
こっちは誰とも話などする気がないというのに。
甲板は石のように冷たくて気持ちがよかった。
子供の頃、実家の庭にあった古い大理石の長椅子を思い出す。眠れない夜はいつもその椅子の上で寝転がって、地上に降り注ぐ満天の星を見ていた。
そうすれば何時しか穏やかな眠りが訪れた。
このまま目を閉じていれば眠れそうな気がした。
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