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『声をきいたの。魂が叫ぶ嘆きの声を』
女の髪が小波のように揺れ、朽ちた薔薇の香りがさらに強くなった。
それを吸い込む度に、体から力が失われていく。
抗う気力が失せていく。
『それは……俺じゃない』
女は静かにうなずいた。
『わかってるわ。でもこの声は、ずっとあなたに付きまとう。あなたが生きている限り――ずっと』
女の銀の瞳が星のように瞬いた。
『どちらを選ぶの? 苦痛からの解放の死? それとも……』
黒い長手袋をはめた女の右手が音もなく伸びて、青ざめたシャインの額にかかる乱れ髪をそっと払う。
女の手は水のように冷たかったが優しかった。
シャインは不思議な感覚を覚えながら、女の瞳を見つめた。
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