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『あなたを通して感じるわ――初めは可哀想なアストリッドお姉様。散々屠ってきた海賊に、まさか、自分が沈められるなんて思ってもみなかったでしょうね。ファスガードはどこまでも妹思いのお人好し。ルウム艦長の死ですっかり弱気になってたみたい。エルガードは……』
ウインガードは形の良い小さな唇を噛みしめた。
『……』
『ウインガード』
黙ったままの船の精霊にシャインは呼びかけた。
彼女が何を見ているのか、容易に想像できる。
『俺は……忘れない。俺が、エルガードにしたことを』
ふわりとウインガ-ドの漆黒の髪が夜の闇を覆うように広がった。
切れ長の銀の瞳が三日月のように細められ、ウインガードは胸の中の汚いものを吐き捨てるように呟いた。
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