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『20年も私は軍艦をやってるのよ? 自殺はもとより、あなたよりずっと多くの死を見てきたわ』
シャインは思わず息を詰めた。
ウインガードの言葉が急にずっしりと胸の上にのしかかるのを感じた。
『すまない。そんなつもりじゃ……なかったんだが』
『いいのよ。本当の事だから。まあ、今夜はそれを見なくて済んで、ほっとしてるけど』
『そうか。じゃ、君に乗っている間は、そういうことをしないように気を付ける』
ウインガードはシャインに向かって『馬鹿』とつぶやき、甲板に落ちるミズンマストの太い影の中へと消えていった。
シャインはそれを見送った後、甲板に寝転がったまま、じっと夜空を眺めていた。
「俺を赦すことができるのは、俺自身……か」
そんなことを思える日がいつか来るのだろうか。
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