3-30 残されし者達

17/18
前へ
/659ページ
次へ
『20年も私は軍艦をやってるのよ? 自殺はもとより、あなたよりずっと多くの死を見てきたわ』  シャインは思わず息を詰めた。  ウインガードの言葉が急にずっしりと胸の上にのしかかるのを感じた。 『すまない。そんなつもりじゃ……なかったんだが』 『いいのよ。本当の事だから。まあ、今夜はそれを見なくて済んで、ほっとしてるけど』 『そうか。じゃ、君に乗っている間は、そういうことをしないように気を付ける』  ウインガードはシャインに向かって『馬鹿』とつぶやき、甲板に落ちるミズンマストの太い影の中へと消えていった。  シャインはそれを見送った後、甲板に寝転がったまま、じっと夜空を眺めていた。 「俺を赦すことができるのは、俺自身……か」  そんなことを思える日がいつか来るのだろうか。
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加