3-3 想いはエルシャンローズと共に

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 一方シャインが海軍省から出たのは、ジャーヴィスより一時間後のことだった。  ロワールハイネス号の修理申請の書類はともかく、航海日誌やその他の報告書も本部へ提出しなければならない。  何分処女航海を終えたばかりである。  艦長として新任であるシャインは、まだわからない業務も多い。  戸惑いつつもそれらの用事を済ませ、シャインは日の光がオレンジ色に強まった屋外へと歩き出した。  人気が少なくなった海軍省の通用門をくぐると、石畳に轍の音を響かせながら流し馬車が通りかかった。  一人乗り専用の小型の馬車で、客は御者の隣に座るタイプのものだ。  片手を上げ、シャインは馬車を呼び止めた。 「どちらへ参りましょうか?」  黒い帽子と外套をまとった壮年の御者は、愛想良くシャインに話しかけてきた。 「西区のグラヴェール邸へ行ってくれないか」 「かしこまりました」
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