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ツヴァイスはアドビスの睨みを受け流すように、口元をかすかに歪めて苦笑した。
「私は商船の依頼を受けて、ノーブルブルーを派遣したまで。エルシーアと東方連国を結ぶ貿易航路で、怪し気な船団がいるのを知りつつ、放置などできなかったものですから。それが、何か?」
ツヴァイスは『それが』の部分を強調して、応接椅子のやわらかな背に深々ともたれた。
「闇雲に船を出すだけなら子供にもできる。十分な下調べをすれば、被害を最小限に押さえ、かつ、海賊共を拿捕できたのではないのか?」
「そうおっしゃいますが、商船から情報を独自に集め、あの海域を特定したのは私です。船団の規模も考え対応できるよう備えをして向かわせました。結果はどうであれ、私の指示に落ち度はない!」
アドビスのいつもながら人を無能扱いするその態度には腹が立つ。
だが肝心のアドビスは、まるでそんなことを聞いているのではない、と言いたげに無関心な様子だ。きらりと青灰色の瞳が瞬く。
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