3-3 想いはエルシャンローズと共に

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 シャインは右手の人差し指にはめたブルーエイジの指輪をなでた。  唯一、母親を忍ぶ形見の品だ。  母親の事を何一つ知らないシャインを不憫に思ったのか。  驚いた事にあのアドビス自らが渡してくれたものだ。  後日それを知ったリオーネが、指輪にまつわる逸話を教えてくれた。  この指輪は純度の高い『ブルーエイジ』という魔鉱石で造られており、リオーネ曰く、特別な『術者』であった姉――シャインの母の事だが、彼女しか身に帯びることができなかったらしいのだ。  通常ならその指輪に触れただけで、気持ちが悪いとか、強烈な恐怖感に襲われ、崖から身を投げて死んだ人もいるという、とても強い『負』の作用がある石らしい。  その『ブルーエイジ』の特性のせいか、この石を身に帯びる者には『破滅』がもたらされる、とも言われている。  シャインの母が早世したのは、この指輪のせいだったのかはわからない。  しかしシャインは、今まで自分が不幸だと思った事はなかった。  けれど強いて言えば、もう自分の人生は終わるかもしれないと思った瞬間がある。
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