3-3 想いはエルシャンローズと共に

11/15
前へ
/659ページ
次へ
「は、はい。申し訳ありません。あまりにも突然シャイン樣がお帰りになりましたから……胸が一杯になってしまって。どうぞ、お入り下さい。すぐお茶をご用意いたします――あ、お荷物は?」  シャインは首を横に小さく振った。 「すまない。今日はちょっと寄っただけで、家に帰ってきたわけじゃないんだ」  エイブリーは一瞬、その穏やかな顔に落胆の表情を浮かべた。  さぞかしがっかりしただろう。  そんな彼の気持ちを察したシャインは、何か気の利いた手土産でも持って来るべきだったと後悔した。 「いえ、それはそれで残念ですが、こうしてお姿を拝見できただけでも、私はうれしいです。シャイン様は海軍の船を任されていらっしゃるのですから、お忙しいのは仕方ありません」  執事は微笑みながらそう言うと、シャインを敷地内へ導いた。  通用門をくぐり、ふたりは並んで石畳を歩いた。
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加