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「は、はい。申し訳ありません。あまりにも突然シャイン樣がお帰りになりましたから……胸が一杯になってしまって。どうぞ、お入り下さい。すぐお茶をご用意いたします――あ、お荷物は?」
シャインは首を横に小さく振った。
「すまない。今日はちょっと寄っただけで、家に帰ってきたわけじゃないんだ」
エイブリーは一瞬、その穏やかな顔に落胆の表情を浮かべた。
さぞかしがっかりしただろう。
そんな彼の気持ちを察したシャインは、何か気の利いた手土産でも持って来るべきだったと後悔した。
「いえ、それはそれで残念ですが、こうしてお姿を拝見できただけでも、私はうれしいです。シャイン様は海軍の船を任されていらっしゃるのですから、お忙しいのは仕方ありません」
執事は微笑みながらそう言うと、シャインを敷地内へ導いた。
通用門をくぐり、ふたりは並んで石畳を歩いた。
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