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「エイブリーさん」
「はい」
シャインはふと立ち止まった。執事もそれにならう。
「ローズ園のエルシャンローズを少し……花を数輪欲しいのだけれど、当主には断っていないんだ。今、無断で手折ってしまうけれど、あの人が帰った時に……そう伝えといてもらえますか」
シャインの視線の先には、青みがかった白い花を咲かせたエルシャンローズを這わせた庭園への門があった。
意味ありげにエイブリーは、ふむ……と首をかしげた。
「どなたかへの贈り物ですか?」
シャインは眉をひそめて、額にかかる前髪をかき上げた。
「ちょっと持って行きたい所があるだけです」
アドビスに続いてシャインと親子二代に仕えているエイブリーは、シャインの感情の籠らない言い方で自分の失言に気付いたようだ。
「勝手なことを言ってしまい申し訳ありません。必要であれば当主もお許し下さるでしょう」
エイブリーは同情を込めた目でシャインを見た。
だがシャインは執事の視線を冷ややかに受け止めると小さく嘆息した。
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