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グラヴェール岬。
家名で呼ばれる岬の先には、一本のまっすぐな幹をした大きな木が生えている。
どんな種類かは知らないが、その樹齢は百五十年、いや、それ以上だと、アドビスが語っていたのを思い出す。
木は潮風に葉を傷めることもなく、青々と茂って地に影を落としていた。
顔を上げたシャインは、ふとその傍らで佇む人影を見つけ、思わず足を止めた。
隣の木に負けない程、すらっと伸びた背の高い黒服の男……。
後ろ姿でも、威風堂々とした気迫が感じられる。
シャインは立ちつくし、戻るべきか一瞬考えた。
だがその間が、シャインに選択すら与えられない結果を招いた。
黒服の男が、振り返ったのだ。
未だ色褪せず金色の獅子のように潮風に髪をなびかせた、アドビス・グラヴェールが。
シャインは唇を噛みしめ、苦々しくその顔を見つめた。
そして、意を決して再び歩き出した。
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