87人が本棚に入れています
本棚に追加
「――俺にもその権利はあるはずですが」
波間に飲まれていく花をじっと見ながら、シャインは静かに言った。
赤や黄色。白に水色。
もう黄昏が迫る。薄闇に呑まれ花の色はすべて灰色にしか見えない。
「……リオーネから聞いたのか。余計な事を」
「余計? 自分の母親に花を手向ける事が、何故いけないのです」
胸の内に高まってきた感情を飲み下し、シャインはたまらず背後を振り返った。
大樹の側に立つアドビスの突き刺すような青灰色の目が、真っ向から光っていた。
「それが、余計だと言っているのだ」
相変わらずかすれ気味の、無感情な声。
自分の行為が余計というならば、アドビスはここで何をしているのだろう。
少なくともエイブリーに屋敷へ戻ったことを隠し、想いに浸るように水平線を眺めていた彼は――。
シャインはアドビスから視線を逸らせた。
会話を続けることにはや、嫌気がさしてくる。
最初のコメントを投稿しよう!