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「理由を教えて下さるまで帰りません」
いつもは話にならないアドビスの態度に嫌気がさして、自らその場を去るシャインだったが今日は違った。どういう心境かはわからない。
けれどここでアドビスと出くわしたのは、ひょっとしたら、母のおかげではないだろうか。
大樹に寄り掛かり、じっと水平線の彼方を見るアドビスに向かって、シャインはゆっくりと近付いた。
アドビスはいつも以上に眉間に影を落としていた。
引き締められた口が開くと、そこからは感情の籠らない言葉が発せられる。
「お前には関係ない事だからだ。だから、わざわざ言う必要もない」
「――中将殿」
アドビスとシャインは向かい合った。
アドビスは下から見上げるシャインの視線を一瞥すると、呆れたように唇を歪めた。
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