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「エルドロインに小石を投げ込んでもその流れが変わらないように、俺がいくら抗ってもあの人は……あのままなんだろうな」
アドビスとのやり取りを思い出し、シャインの顔は迫りくる夜の闇のように暗くなった。
河岸の方から湿った風がそよいできて、首筋に当たるその冷たさに、シャインは航海服の襟を立てた。
何時までもこんなところにいてどうなる。
アドビスの言い方を真似れば、どうにもならない事をいじいじ考えた所で時間の浪費でしかない。
川面から馬車の行き交う橋上に視線を向けると、外灯に灯りをともす十二、三才ぐらいの少年がいた。
火種のついた長い棒を器用にランプの傘の下へ突っ込み、芯に火をつけていく。
「……帰るか」
シャインは軽くため息をついて、石畳の道を一人歩き出した。
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