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くるくる変わる表情、あけすけな感情。
そして自力で船を動かしてしまう強靱さと、その想いの純粋さ。
どれをとってもロワールには、驚かされっぱなしだ。
だが彼女のおかげで、今までどれほど勇気づけられただろう。
処女航海を終えるまで、多くの不安があった。
父アドビスの力を誇示するかのように、決められたロワールハイネス号艦長の辞令。
士官候補生から任官試験に合格して、一士官として配属されると思っていたシャインにとって、寝耳に水な話だった。
さすがにいきなりそれは恐れ多く、知識を深める為に、かの船の建造に携わる事を条件に承諾した次第だ。
航海術や船を自在に動かす事に自信はあったが、だからといって後方支援といえど、艦長が勤まるかは別の問題だ。
それを危ぶんでか、アドビスと仲の悪いジェミナ・クラス軍港の司令官ツヴァイスに、実力を試されるような扱いを受けたのはつい先日のことだ。
シャインはめぐらせた物思いがアドビスの事に戻り、心にずっしりとのしかかる憂鬱さを感じた。
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