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「……いっそどこかへ消えてやろうかな」
できもしないことをつぶやきながら、シャインはちらほらと水兵や、士官達が出入りする酒場の前を通りかかった。薄い水色と白色の石で組まれた瀟洒(しょうしゃ)な店で、入り口には海の守神で有名な、青の女王(ブルークイーン)の船首像が飾られている。
おそらく海軍の払い下げられたそれを、安く買い取ったのだろう。
青の女王は聖母のような慈悲深い笑みを客に振るまい、招くように両手を前方へ差し出していた。
「これはグラヴェール艦長!」
その時背後から親し気に肩を叩かれ、シャインは内心驚きながらも、努めて顔に出さないようこらえた。
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