87人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れの所、ご無理言ってすみませんな。今日は私がおごらせて頂きますので」
「いえ。用件が済めば帰りますので、お構いなく」
シャインは嫌な予感を覚えながら、顔に出さないよう淡々と言った。
鼻の頭にそばかすのあるぽっちゃりした給仕の娘が、にこやかに微笑みつつ注文を聞きに来た。
めいめい食事と酒を頼んだ所で、シャインは用件を聞こうときりだした。
「……で、どういう方がいるんです?」
「あ、ああ……ロワールハイネス号の航海長の件でしたね」
ドン!
先程の給仕娘が、アルバールの前に泡で溢れた麦酒のジョッキを置いた。シャインには赤紫色の美しい果実酒、シシリー酒のグラスをそっと。
「ご用がありましたら、遠慮なく声かけて下さいねー。グラヴェール艦長」
給仕娘はアルバールには目もくれず、シャインにことさら笑みをふりまきながら立ち去った。
カウンターの側で待機している他の給仕娘達もじっとこちらへ熱い視線を送っている。
最初のコメントを投稿しよう!