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シャインと目が合った途端、男は大きめの口をにやりとさせて微笑した。
少年を思わせるような無邪気な笑み。
沈みゆく危険な状態の船上だというのに、それを恐れている気配は全くない。
寧ろ、楽しんでいるような気さえ感じられる。
男は船尾楼の手すりに手をつくと、しなやかな体躯をひねらせて、二リール(一リール=一メートル)下の甲板へひらりと飛び下りた。
軽く片膝をついて、無駄のない動きですっと立ち上がる。
肩に流れる豪奢な銀糸の髪を、軽くゆすって顔を上げた男は、夜色の双眸を舞い上がる火の粉の光で、紅に煌かせながら口を開いた。
「シャイン……やっぱり生きていたのか。しかし、無事で良かったぜ」
「ヴィズル。もしかして、助けに来てくれたのかい?」
シャインは疲れたように、だがそうであればいいのにと願いつつ返事をした。
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