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◇◇◇
シャインは息を詰めた。
肺が押し潰されそうな程の息苦しさを感じ、夢中で空気を求めた。
けれど、口を開けば大量の海水を飲み込んでしまう――。
それに気付いた時、シャインはぼんやりとした橙色の光を放つ角灯の明かりを見上げていた。船の梁にぶら下がった黒い鉄の角灯は、ぶらぶらと右へ左へ揺れながら、壁際に吊り下げられたひと組のハンモックを弱々しく照らしている。
ハンモックにはファスガード号で負傷したジャーヴィスが、暖かな毛布に首までくるまり深い眠りに落ちている。
「……」
シャインは大きく息を吐いた。
何時から息を止めていた?
寝汗に濡れる額を拳で拭い、机代わりにしていた小さな木箱から、のろのろと重い上半身を起こす。ジャーヴィスの頭上で瞬く角灯がジッと音を立てた。
小さな蝋燭が一つだけ灯されているそれが消えていないことから、眠っていたのは三十分にも満たなかったようだ。
体にまとわりつく泥のような疲労が、少しも消えないのはそのせいだろう。
シャインは目を伏せ小さく唇を噛んだ。
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