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藍
「おばあちゃん、四国三郎て誰?」
お盆休みに娘の藍を連れて、久しぶりに実家に帰ってきた。
藍染のワンピースを着た藍は、板間に寝転んで猫を撫でようとそろりと手を伸ばす。猫はふいとその手を避けて庭に逃げていった。
しばらく猫を探していたが諦めたのか、ワンピースからのぞく足をパタパタと揺らして、藍は池の鯉に餌を投げ入れている。
チリンチリンと鳴る風鈴と、穏やかな田舎の空気。見るともなしに眺める軒先の変わらない景色に、凝り固まった肩が解れていくようだ。
わたしのお下がりの藍染のワンピースは、子どもの頃に母が縫ったものだ。
上手く作れたと散々着せられたのに、まだ使えるとは。
何年、何十年経っても藍染は色褪せることなく、防虫効果によって虫も食わない。
包帯にも使えるといわれるほど殺菌効果があり、アトピーのある藍の肌にも優しい古着だ。
「四国三郎っちゅうんは吉野川のことじゃわ。藍もさっき通った橋が四国三郎橋。
なんでほんなこと聞くんで?」
「夏休みの自由研究! おばあちゃん、藍、藍染やりたい!」
「ほな明日行ってきたらええわ」
スイカを切り分けながら、母は大きくなった孫にサービス満点だ。
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