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はじまりは想定外
はじめてじゃないことも「はじめて」と感じる。オヤジによれば、それが〝恋〟ってものらしい。
まさに現在進行形で体験してるはずの身で「らしい」と言ったのは、俺自身、別段そう感じていないからだろう。
いつもと同じ。なんの代わり映えもなく日々が過ぎていく。成り行きで付き合いはじめただけなのだから当然といえば当然ではあるけれど、それにしたってもう少し世界が輝いて見えないものかと、ちょっぴり残念に思う。
『好きです! 付き合ってください!』
この世界で使い古されているだろうセリフ。ちょっとした罰ゲームの定番。返る言葉が何であれ、笑いのタネにしてその場で終わるはずだったものがそこから外れてしまったのは、ひとえにその高慢な態度ゆえだった。
『いいよ。その言葉、本当にしてあげる』
少しばかり長身で、少しばかり美形。――たったそれだけの印象だった彼女に、はじめて、興味が湧いたんだ。
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