はじめての気持ち

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はじめての気持ち

 ほんの少し前後にズレた横並び。背が低いほうの俺としては、高身長の人物近くに立ったり歩いたりしたくはない。ただ、それは普段ならの話であって、今回は事情が別だ。  ――そう、これは〝放課後デート〟というやつである。  シチュエーションとしてはドキドキするし、見慣れた場所も真新しく見えてくるが、通いなれた道は落ち着きをくれた。 「茨戸さんも帰宅部なの?」 「そうだよ。意外かい?」 「うん。バスケとかバレーやってそう」 「背丈こそこれだけど、運動は苦手でね。クラス体育は男女別だから知らなかっただろう」  貴公子なんて呼ばれているから、てっきり運動系の部活で活躍していると思っていた。じゃあ、由縁(ゆえん)は何なのだろう? 「そうだ。いきなりで図々しいけど、『カイ』って呼んでもいい?」 「え? ……ああ、かまわないよ」 「よかったー。俺のことも『イッキ』でいいよ」  直接聞けばいいのに、話題のタネを()いて待つのはヒキョーだろうか。茨戸はマメなようだから、きっと聞いてくる。案の定、どうしてイッキなのかと問いかけが来た。
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