はじめての気持ち

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「麻生と葛西のあだ名は知ってる?」 「ソーダとサイダー」 「そそっ。2人とも名前がダイチだったから俺が付けたんだけど、そしたらお返しでイッキって呼ばれるようになったんだ」 「一輝(カズキ)がイッキとも読めるからか」 「ご名答。それにほら、飲み物との相性バツグンでしょ? 炭酸の一気飲みは正直ムリだけどね」 「あははっ、たしかに」  声をあげて笑う茨戸にどきりとする。遠目には何度か見ているが、はじめて間近で見たそれはなかなかの衝撃だった。  できればもっと見ていたい。そう思うのが恋し始めたからかどうかは、まだ分からない。可愛いものを愛でているだけのような気もする。 「カイはさ、どうして貴公子なの?」  茨戸の歩みがちょっぴりゆるむ。違和感のない自然な流れで聞けたのに、嫌なことを聞いてしまったんだろうか。1軒目のパン屋も近いことだし、下手に口を挟まずもう少し待ってみる。  商店街のパン屋は2軒ある。細かいことを言えば、本店と支店の間柄なので1軒と言えなくもない。本店がパンを焼き、支店はそれを加工して惣菜パンを売っている。とりあえずどちらの店も方角は同じだからと確認もせずに歩いてきたが、茨戸はどっちに用があるのだろうか。
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