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春若が体重をかけると、欄干はぎしりと音を立てた。
暗い川にぼんやりと映る月。朝が早い問屋の人々は、既に明かりを消して寝静まっている。だからこそ、この時間の月ははっきりと浮かんで見え、美しいことを春若は知っていた。
春若が呉服屋のある通りに目を向けた時、そこには一人の女が立っていた。
こんな時間であるにもかかわらず、提灯も持たずにぼんやりと立ち尽くす姿は、なんとも奇妙であった。
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