一章:哲学の魔法少女

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Ⅱ.  此処、ロンディヴィル王国の王は戦争を好まない。  それ故に言語による平和的交渉や問題解決を理想とし、それを形にする人材……いいえ、兵器を作るための研究所を数十年前、政府の重鎮たちは秘密裏に設立した。  平和を謳う王は全く研究所内のことを把握しようとはせず、それを良い事に研究者たちは奴隷商人から各国の孤児を買い取り、非人道的な人体実験を繰り返した。  その結果、多くの子ども達は実験に身体が耐えられず死んでいき、偶然にもワタシだけが生き残りこの国の兵器に選ばれた。  最初は本当に、ワタシの言葉を用いて他国と駆け引きをし、最終的には此方がより多くの利益を得られるよう話をまとめるだけだった。 なのに。 「今日は隣国を攻め滅ぼす」  研究所を出て七年ほど月日が経ったある日、何者かによって王は暗殺され、その一人息子である王子が王の座を継承してからというもの、彼は昼夜問わずワタシを戦場に送り込み軍師の真似事をさせた。  それだけではない。  不運なことに、ワタシには魔力と呼ばれる力を燃料とし魔術に変換する特異稀なる能力も持っているために、 「兵器らしく、その力を奮って来い」 このような王命を、もう何十回と受けた。  ワタシも一応はヒトの身なので、敵の銃口から放たれる魔力を圧縮させた魔弾が当たれば言葉では言い表せない痛みを感じるし、刃物で切り付けられれば自然と涙が溢れてくる。  しかし、日に日にワタシの心は消耗し、やがて感情の全てが、思考が麻痺してしまっていた。  そしてワタシは、ただの兵器に成り下がったのだった。
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