第一冠 天成

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 ユクは咄嗟に手を伸ばして穴の淵にある床の一つを掴もうとしたが、タイル状の床は彼の重みでだんだんと傾いてゆき、最後にはこれも他の床と同じようにガシャンと外れてしまった。 「ユク…!?」 落ちていくユクを見たヘルは、咄嗟に身を乗り出して両手を伸ばし、辛うじてユクの手を掴む事に成功した。だが、掴んだ手でいくら引っ張っても、彼女一人の力では落ちていくユクの体を支える事すら出来ない。 「……気を抜いていた。ごめん。」 「だから…、だから心配だって言ったんだよ…!!」  ユクの手を握りながら、ヘルは大声で叫んだ。今まで貯め込んできた気持ちを、精一杯伝える為に。 「ユクはすごいよ…。私よりも頭が良いし、一人で何でもできる。…でも!…もっとみんなを頼ってよ…!」 「ヘル……。」  ヘルの声を聞き、ユクは俯いたままの顔を上げる。ぼんやりとした表情で声の先を見上げると、そこにはぐしゃぐしゃに泣きじゃくるヘルの姿があった。 「私はね…。ユクが…。いつかどこかへ行っちゃいそうで…。ずっと怖かったんだ…。」  ヘルのこぼした大粒の涙が、ユクの頬を伝う。その涙の温かさを感じる度に、ユクは無関心な自分の浅はかさを後悔した。 「俺はどこへも行かないよ。」  ユクは言った。いつもと変わらない無関心な言葉を。無表情のまま。せめてこれ以上彼女を悲しませないために。 「ユクーーーーーっ!!!」     
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