それはトップがカラメルで

3/10
前へ
/21ページ
次へ
芽里ちゃんは弾くように顔を上げた。そしてばつが悪そうに俯いて答える。 「ごめんなさい……」 「別に謝ることじゃないよ、僕が用意してなかっただけなんだから」 「あらら、残念だったねぇ」 「はい……でもどれも美味しそうだから他のケーキを買って帰ります」 シュンとしょげた顔、昼間に来た子なら残念でしたで済むのだけれど。 「……それってどんなケーキ? 気になるな」 「え……?」 芽里ちゃんは質問を続ける僕を不思議そうに見つめる。 「多分、君は普段こんな夜中に外を出歩くような子じゃないだろう? 髪も洋服もきちんとしてるし、不良にしては礼儀正し過ぎるんだよね。わからないけど、昼間にもケーキ屋さんに行って欲しいケーキを探してたんじゃないかい?」 彼女はしばし逡巡した後、コクリと頷いた。 「はい……。今日は、いえもう昨日だけど、お父さんの命日だったんです。だからお母さんと一緒に、お父さんが好きだったケーキを食べようと思って」 「お父さん亡くなってたのかい?」 「はい……交通事故で、おととし」 僕達にはかけられる言葉が見つからなかった。……まだ甘えたい盛りだろうに。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加