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「芽里!」
僕と同じくらいの歳の女の人が血走った目をして店に飛び込んできた。眼鏡にすっぴんで、部屋着のままである。
「お、お母さん!」
眼を真ん丸にした芽里ちゃんが、ケーキを持ったまま固まった。
「馬鹿! 何してるのここで!」
彼女のお母さんは芽里ちゃんのほおを容赦なくぶつ。身体が震えていた。よほど肝を冷やしたのだろう。
「ごめんなさい……」
芽里ちゃんはケーキを持ったままうな垂れた。言い訳をするつもりはないらしい。僕は静かに聞いた。
「どうしてここがわかったんですか?」
「ケータイのGPS機能です! 電話も全く出ないし……」
僕は安座上さんに預けてあった彼女の赤いポシェットに目を落とす。中で赤外線がピカピカ光っている。本当は持っていたみたいだ。
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