シンデレラの魔法が解ける頃に

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太陽が完全に沈んで、壁の時計が零時零分を指したと同時に、僕の店は開店する。 店先に手書きでメニューを書いてある看板を出し、自動ドアのスイッチをオンにして、最初の30分くらいはケーキを並べたショーケースの前に立って待っておく。 店の名前はそのまんま「真夜中洋菓子店」。営業時間は深夜12:00から早朝7:00、いわゆるケーキ屋さんが通常営業している時間ではない。 元々ぐうたらな気質の僕はパティシエの免許を取ってしばらくダラダラとモラトリアムを延長していたのだけど、いい加減姉に怒られたので思いつきで小さなケーキ屋を開店してみることにした。種類は十種類くらいのケーキと五種類くらいのその他の洋菓子を置く。夜に開けてみた理由は僕が朝弱いからだ。 僕自身ダメ元で店を開けていたのだが、意外にお客さんは来てくれた。 夜勤が終わったサラリーマンや土木のおじさん、キャバ嬢など、わりと色々な職種のお客さんが店のショーケースからケーキを選んでくれる。開店してもう半年経つのだけど、思わぬ軌道の乗り具合に僕自身が驚いている。
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