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ふたたび自動ドアが開いた。今度は20代の背が高いサラリーマンだ。彼も小日向さんと同じくらいの頻度で来てくれる常連である。
「こんばんは、才穂さん。小日向さんも奇遇ですね」
「安座上くんも。残業?」
「はい、書類整理が今終わったんすよ」
「相変わらず忙しいな」
このくたびれたスーツの安座上くんは要領が悪いのか人手不足なのか知らないが、この店に頻繁に訪れてはケーキを三つくらい買って帰る。彼女はいないらしいから一人で全部食べるのだろう。昔から太らない体質だと言っていた。羨ましい体質である。
「いやー、この店が出来て本当に嬉しいです。俺甘党だし」
「な? ついつい通っちまうよ」
鉢合わせる機会が多いせいか二人はえらく仲良しだ。
「俺今日はコーヒーゼリーにしようかな」
「キャラメルムースもいいぞ」
大の男が二人でショーケースに頭を並べてケーキを選ぶ様子は中々シュールな光景だ。黙ってるけど。
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