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「じゃ、帰るな」
小日向さんが自動ドアに近づいたところだった。
「うわっ!」
ケーキの箱をぶら下げた彼がそのまま後ろずさりしてくる。
「え」
安座上くんもぎょっと目を凝らした。
どう見積もっても小学校を卒業してなさそうな少女が入り口の前で立っている。綺麗に二つ結びをして、着ているブラウスからスカートまでシワ一つなく困ったことに不良には見えない。僕たち大人は少女を放心状態で凝視する。
「一応聞くけど、夜遊びかな?」
僕は出来るだけ温厚な口調で聞いた。
「違います」
素直な声だ。非行に走っている娘の返事ではない。
「何しに来たの?」
小日向おじさんが優しく尋ねる。顔ひきつってるけど。
「ケーキを買いに来ました」
そりゃそうか。昼間なら歓迎するところだけど、残念ながら僕は起きてられない。
「今深夜の一時だよ、君くらいの女の子は寝てる時間だよ。えーと……」
安座上おにいさんがさりげなく身元を確認する。
「夜山芽里です」
少女はぺこんと頭を下げた。
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