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……………。
何を言っているのか分からねーと思うが、俺がこの紐を引っ張ったら電気を消すように星の明かりが消えちまった。というかまんまだが、この世界の真理の一端に触れてしまったような怖ろしいものの片鱗に触れてしまったような気がしなくもなくなくもない。
とは言ってみたものの、残念ながら、元から輝いていた星があまりにも少なかったせいで、ぶっちゃけすぐに何が起こったかは理解していなかった。
カチって手応えがしたなー、そういや北斗七星とか見えなかったっけ、あれ、シリウスないじゃねーか。というか、星がまったく見えねーじゃねーか。え、え? もしかして星消えてんの? あ、まさか……これ星のスイッチだったんだ。と、めっちゃタイムロスして気づいたのだ。
迫力がない。
なんだよこのささやかなピタゴラスイッチ。
俺はため息をつく。
と、その拍子に、まだ握ったままだったその紐をもう一度引っ張ってしまった。
途端、
ーー全天の星が瞬いた。
あまりの絶景に、俺は尻もちをついていた。星が少ないはずの都会の空に、まるで降ってくるかのような、見事な星空。シリウスが全天一明るい星だといっても、これではすぐに見つけることは難しい。そんな星空。
この都市を「星空保護区ゴールドディア」に認定してもいいくらい。「星空保護区ゴールドディア」とは、国際ダークスカイ協会が認定している、世界でもっとも美しい星空を見ることが出来る場所で、世界には三か所しかないらしい。この星空を灯した張本人として、観光料の分け前を頂いたりとかですね……ぐふふ。
なんて無粋なことがどうでもよくなるくらいに、
「すげぇなぁ……」
と、俺は素直に見惚れていた。百万ドルの夜景よりも、このプライスレスの星空の方が好みだ。
しかし……、この星空は、見ているうちにどんどん、どんどん、明るさを増していって……。
「目がぁ! 目がぁあああ!」
と叫びだしたくなるくらいになっていた。もはや真っ昼間のよう。
いやいや、これはまずいのではないのでしょうか。俺は慌てて紐を引っ張ろうとした。蛍光灯方式なら、もう一度引っ張れば光は弱まってくれるはずだ。
だが、俺の期待も空しく、
「切れてんじゃねーか!」
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