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キレてないですよ、なんて言えるはずもなく、キレた俺は紐を床に叩きつけた。紐を引っ張っても、もちろん手ごたえは何もない。しかしどうしようもない。
困った俺は、最終奥義、見なかったフリを使うことにした。この場には誰もいないのだ。それに、天から下りていた紐を引っ張ってこうなったと言ったところで、誰も信じはしない。
俺がやったとばれることはない。それにーー夜がなくなれば、夜に電気を灯す必要もなく、電力の節約にも大助かり。俺はいいことをした。いいね、反論は認めない。俺は、いいことをした。
そうして俺はそそくさと屋上を後にするのだった。
しかし、次の日。
…………どうしてこうなった。
俺は愕然としていた。
もちろん仕事が終わっていないので上司に怒られたーーそれだけならまだいい、いや、まったくよくはないのだがーー、夜も明るくなったおかげで、今は昼だから働けるね、とブラック度が増した。夜の闇の濃さを肩代わりしないであげて欲しい。
いや、それもまだいい。いやいや、よくはないのだが、これよりはマシだった。
俺は今、郵便受けから出した紙を見ていた。
それは請求書だった。
そこにはーー
請求者 “星空カンパニー”
請求内容 星空の使用料
請求金額 天文学的な数字が絶賛増額中だった。その回転速度にはケタしか分からない。
請求書の最後には、ご丁寧に“神”という押印。
……漢字なんだ、と思わなくもないが、相手が神なら借金を踏み倒せるわけがない。
俺は頭の中が真っ白になった。
まさしく、今の夜空のようにーー。
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