2人が本棚に入れています
本棚に追加
一輝side
今日もいつも通り、塾に行き仕事をする。もうすぐ生徒達が来るなと思っていると、塾の電話が鳴り響いた。
「…誰だろう?」
休みの連絡だなと思いながら、電話に出る。
「もしもし。」
「あ、もしもし。私、柊那緒の母なんですが……」
柊の母親だった。今日は休むのかと思いきや、予想外のことだった。
「那緒、そちらに行っていますか?」
「……え?来ていませんが……」
「そうですか…。」
電話越しに聞こえる声が、だんだん泣いているように聞こえて、俺は尋ねた。
「あの、何かあったんですか?」
「…実は……。」
母親から事情を聞いて、一瞬心臓が止まったような気がした。
「今、兄の依緒も大学から帰ってきてから探しているんですが…まだ見つかっていなくて……。」
「……」
「…すみません、ご迷惑お掛けして……。では。」
そう言って、那緒の母親は電話を切った。俺も受話器を戻して急いで支度をした。
「星野先生?どこへ行くのですか?」
「すみません、木村先生。俺、捜し物をしていたので探しに行ってきます。もしかしたら、今日は戻らないかもしれないです。」
「え、突然何を…もうすぐ授業が……」
「すみません!」
俺は急いで塾を出て車に乗り、柊の家に向かった。
柊の家に着くと、柊のお兄さんがちょうど車から降りて家に入るところだった。俺は車から降りて、お兄さんの腕をとる。
「えっ…あなたは……那緒の…なぜここに…?」
「説明してたら長いから、とりあえずどこを探したか教えてくれないか!?」
「えっと…友人の家や、学校や、よく行くお店やコンビニ…。あとは、公園とかです。」
「…そうか。」
すると玄関のドアが勢いよく開く。中から、那緒の父親と母親が出てきた。
「依緒っ!いなかったか!?」
「ごめん、父さん…いなかった。」
「そうか…それはそうと…依緒、その方は?」
「那緒の塾の先生。」
「こんにちは、息子さんがいなくなったと聞いて来ました。」
「いなくなったと行っていい…のか……?」
「どうなんだろ…母さんは?」
「私は…いなくなったと言うより、誘拐されたんじゃないかと思ってるわ…。」
「誘拐…?」
その言葉が引っかかって、俺は聞き出した。
「あの、誘拐された…とは……?」
「買い物から帰ってきた時、家のトイレがなぜか壊れていて…多分だけど、那緒がトイレにいる時に誰かがドアを壊して連れ去ったんじゃないかと思ったんです。」
最初のコメントを投稿しよう!