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6月10日、東京、梅雨の時期で雨の日が続く。今日は一段と土砂降りの雨だ。じめじめしていて、暑い。そんな中、俺は今日も普通通りに学校に行く。そう…いつも通り……そう思っていたんだ。あのことが起こるまでは……
柊那緒、17歳、普通の高校二年生。何の取り柄もないし、かと言って悪い所はない。普通だ。何もかも。俺は男子校に通っている。女子とは無縁の高校だ。別に彼女が欲しいわけじゃないから、どうでもいいんだが……。
「那緒ー!」
「浩輝…」
一条浩輝、俺と同じ高校二年生、一緒のクラス。彼は成績も悪くないし、運動神経も俺より良い。こんな彼と俺が、友達になっていいのかとよく思う。
「なぁ、那緒って…塾に行くのか?」
「え…なんでそれを…」
「担任に聞いた。お前だけ、塾に行くってこと。」
「…そっか……」
俺は塾に行くことにした。最近成績が落ち気味で、親にも行くことを進められたからだ。
「その塾って、評判いいのか?」
「多分…両親が通っていたから評判はいい。ただ……」
「何…?」
「…いや、何でもない。」
あの噂が本当かどうかは分からなかったから、言えなかった。ただ、もし本当だとしたら…俺は死ぬかもしれない……。けど今は、そんなことより自分の学力のことだけを考えよう。そう思った。そしてあっという間に時間が過ぎ、初めて塾に行く時がやって来た。
駅に行って10分程、電車に乗ると目的の塾のある西野市に着いた。そして5分ほど歩いて塾に着いた。
「…ここが……」
どうすればいいのか迷っていると、中から誰かが出てきた。
「君、ここに用事でもあるの?」
「え…」
見るからに、ここの塾の先生だ。
「あ、あの…俺、ここの塾に見学…に……。」
「あっ、もしかして柊那緒君?」
「は、はいっ!そうです!」
「あぁ、君が…。私は、ここの塾で数学を担当してる星野一輝。よろしくね。」
「…はい…よろしくお願いします…。」
一瞬…ほんの一瞬だったけど…星野先生が、笑ったような気がした。その笑みに、若干恐怖を感じたんだ。
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