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明かされる真実
「昨日…って……え?どういうこと…?」
「あなた、塾で倒れたみたいね。依緒から聞いたわ。」
「依緒兄…から……?」
「えぇ、あなたが倒れたあとのこと全部言うわね。」
そう言って母さんは、俺の知らない出来事を話す。
昨日、那緒が倒れたあと。
柊家の電話が鳴る。受話器をとったのは、家で一人で留守番していた、那緒の四つ下の妹、柊美緒だった。
「はい、もしもし。」
「もしもし、私、水野塾の木村という者ですが…お父さんかお母さんはいらっしゃいますか?」
「…すみません…両親二人とも留守にしていて、私一人なんですよね。」
両親は共働きで帰ってくるのが遅いし、兄の依緒も家から通っているとはいえ、サークルで忙しくしている。
「そうですか…困りましたね……。」
「あの、何かあったんですか?」
「実は……」
美緒は、那緒が塾で倒れたことを知り、驚いた。ちょうどその時、兄の依緒が帰ってきた。
「ただいまー…あー、疲れたぁ…」
「あ、依緒兄!那緒兄が!!」
美緒は、受話器を手から離して木村から聞いたことを依緒に伝えた。そして、依緒は急いで電話に出る。
「すみません、お電話変わりました。那緒の兄の柊依緒です。弟の様子は…」
「あ、お兄さんですか。実は、塾が始まる前に気分が悪かったのか、嘔吐したみたいです。それからかなり熱が高くなっていて……」
「それは…ご迷惑をおかけして、申し訳ございません。今すぐそちらに迎えに行きます。」
「いえ、それではお待ちしています。」
電話を切って、依緒は急いで支度をする。
「依緒兄…私…ごめんなさい……」
「はぁ?何で美緒が謝るんだよ。別に怒ってねぇし。俺は那緒を迎えに行ってくる。美緒は父さんと母さんが帰ってきたらこのことを伝えてくれ。いいな?」
「うん…分かった。」
「じゃあ、行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
依緒は、那緒の通ってる塾に向かった。
「本当に申し訳ございませんでした。」
依緒は塾に着き、木村に深く頭を下げた。
「大丈夫ですよ。頭上げてください。」
そして奥から、星野が那緒をお姫様抱っこして来た。
「柊依緒さん、ですか?」
「あ…はい。」
「弟さん、連れてきましたよ。」
そう言って、星野は依緒に那緒を渡す。
「本当にすみません、ありがとうございます。」
「いえ、お大事にしてくださいね。」
「はい…。」
そして依緒は、那緒を連れて帰った。
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