教科書通りの恋を教えて

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「アルファとオメガには、運命の番がいるって本当ですか?」 「……そうだね。その質問の答えの前に、番について説明をします。性行為中にアルファがオメガのうなじを噛むことによって、その二人には番と呼ばれる関係が結ばれます。これは、ベータと他の性別種間にはないものです。この時アルファは階級分化フェロモンを分泌し、相手のオメガはこの影響でヒート期間中にオメガが分泌する性フェロモンの性質が変えられ、それまで不特定多数に対して効果のあった性フェロモンはうなじを噛んだ唯一の相手のアルファのみに作用するようになります。また、ヒート期間中は番となったアルファ以外の相手との性行為に対して強い拒絶反応が出るようになります。この番契約はどちらかの相手が死ぬまで続くと言われていましたが、最近の研究では、アルファの階級分化フェロモンの強さは個人差があり、長期間離れて過ごしたアルファとオメガの間では番の効力が弱まっていたという研究結果も出ています。ただし、番契約は特にオメガには人生を左右する重要なことなので、結婚を約束した相手以外とは無闇にしないことが推奨されています。また、法律で定める婚姻可能年齢は現在十八歳ですが、それを下回っていても、番となった場合は十四歳から結婚することができます」  室見や、クラスの全員が静かに聞いている中、郁は続ける。 「さっき質問のあった運命の番については、教科書にも書いてある通り、アルファとオメガが出会った瞬間からお互いに惹かれ、相思相愛になるというものですが、科学的根拠は解明されていません。事例も少なく、性別種とは無関係との見解を主張する研究者もいます」  それを聞いて、教室の中は少しざわついた。
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