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受け持ちのクラスは、アルファが一人、オメガが二人、その他三十七人がベータだった。誰がどの性別種かは学校側から生徒たちに公表することはないが、何となく立ち振舞いや雰囲気で察して、あの人はアルファだ、オメガだ、と生徒同士の噂話の対象になる。それはもちろん生徒だけに留まらず、教師にも向けられる。
「明科先生の番って西条先生ですか?」
「ちがうよ。西条先生は同期と言って、同じ年に先生になった仲間だけどね」
「なんだー。時々西条先生って明科先生のこと、“郁”って呼んでるし。すごく仲良さそうだからそうかと思った。西条先生ってアルファですよね?」
「西条先生の性別種は、先生は知らないな」
うそー! と女型生徒二人は楽しそうに歓声をあげる。
郁は自分がオメガだということを生徒たちに説明していたため、なんでも遠慮なく聞いてくる生徒は多かった。その中でも特に室見は、よりプライベートなことまで踏み込んで聞いてくるので、どう答えたら良いかと困ることがしばしばあった。
放課後に廊下の掲示ポスターの入れ替えを行っていると、どこからともなく室見はやってきて、郁を質問責めにした。
「先生は結婚してる?」
「してないよ」
「じゃあ恋人いる?」
「……大人をからかうんじゃない」
「からかってなんかないって! 本気だよ」
「なら、なおさらだ。藤原にちゃんと返事したのか?」
「……あー……。まだ……」
室見は隣のクラスの藤原という女型オメガの生徒から告白をされて、どうすればいいかと郁に相談していた。
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