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「は? なんで西条先生にそんなこと……」
室見の、郁に対する態度とのギャップに失笑しつつ、西条は真面目な顔になって続ける。
「条例で決まってるからな。青少年保護育成条例ってやつで、大人は、青少年とは同意があっても付き合っちゃいけないことになってるんだよ。だから、十四歳のお前と明科先生は付き合えないんだ。付き合ったら明科先生が、最悪逮捕される」
「なにそれ……」
西条の説明を受けて、室見の顔色は目に見えて白くなった。
「そういうわけだから、大人になるまで明科先生のことは諦めとけよ。番になって結婚でもしない限り、どうにもならないんだから」
「そんなの……でも……」
恨めしげに西条を見る室見の顔には、納得いかないと書いてある。それを見た西条は、突然郁の肩に腕を回して引き寄せた。
「明科先生は、それまで俺が守っといてやる」
「さ、西条先生……?」
にかっと歯を出して笑う西条に、郁は驚いて身を引いた。オメガという体質なこともあり、他人とのスキンシップを極力避けてきた郁にとっては充分濃厚な接触の部類で冷や汗が出てしまう。
「じ、自分の身は自分で守るから、大丈夫だよ……」
郁は混乱しつつも西条の腕から逃れて向かいに立った。西条は室見をちらりと見て、でもなー、と呟く。
「こんなにかわいいから、心配だよなあ。室見」
西条は室見に、郁を好きな仲間同士といった感じで、フレンドリーに接する。しかし室見は、頭を軽くぽんぽんと撫でた西条の手を強く叩きのけると、無言でどこかへ行ってしまったのだった。
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